「椎の実が喰いたいっ」
最近の口癖がこれである。
ちっちゃい頃、おばーちゃんが炒ってくれた椎の実。あれが食べたい。
最初はギャグだったのだ。山育ちの斗吾がドングリを拾って「ガキの頃はこれがおやつだった」と事も無げに告白して、東京出身の仲間を驚かせる、という。
が、ネタにした自分の幼児体験が日に日に甦り、ついにはミイラ取りがミイラになるが如く、私ぁ連日「椎の実が喰いたいっ」と叫ぶよ−になってしまった。

食い物的には、そんなに美味しいというわけではない。香ばしさと歯ごたえだけが命のような、ほんのり甘い、いわゆる素朴なナッツである。
小学生の頃、通学路は椎の木の森の下を通っていた。秋になると道路の隅に砂利のように椎の実が落ちていて、面白がって大量に拾ってきては母に嫌がられていたのだが(なんとなれば、ドングリは放って置くと虫が出てくるのだ)、ある日祖母が拾ったばかりのそれを炒ってくれた。おばーちゃんと一緒に食べたそれが美味しくて、でもなぜか母には頼めなくて、食べたのは結局それ一度きりだった(虫食いを取り除ける方法に自信がなかったとも言う)。今、むしょーにあれが食べたいのである。

ハウステンボスの中にはドングリの木がたくさん植えてある。巨大なドングリ、丸い樫の実、マテバシイ、トチの実、その他もろもろと子供のおもちゃには事欠かないが(噂では胡桃の木もあるとか!)、なぜか、知る限りでは椎の木がないのである。初夏になるとジャムが作れるほどヤマモモがなるのに、レストランの玄関先では調理用のハーブを自給自足しているというのに、椎の木はないのである!
なんでかなぁ。あったら、山ほど拾ってくるのになぁ。

あー、椎の実が喰いたい。

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